踏切の幽霊
高野 和明/著
気がつけば前作ジェノサイドから11年。本屋さんへ行くたびに必ず新刊を探す大好きな作家の高野さん。久しぶりの高野作品に心躍らせて本を開いた。
主人公は、週刊誌の記者をしている松田。松田は、新聞記者としてバリバリ働いていたが、妻の死後には仕事第一だった自分に嫌気がさして週刊誌の記者に転職し、マイペースで仕事をするようになっていた。そんな松田のもとに、ある日任されたのはテレビ視聴者から寄せられた心霊写真を検証するという仕事だった。
はじめは気が進まない松田だったが、踏切で撮られた一枚の写真と出会い、生半可な気持ちで向き合うことができなくなった。この写真が撮られた背景を調べる過程で、写真に写りこんだ女性に興味を持つ。それは、亡き妻への思いとも重なって、松田は、しばらく忘れていた情熱をもって仕事にのめりこむのだった。
読んでいるうち、怪談としてではなく、ひとりの女性としての人生や家庭問題、社会問題へと思いを馳せずにはいられなくなる。
生きていく人間だけでなく、亡くなった命にまで深い思いやりを持ってペンを持つ作者の目線が伝わってくる、しみじみとした作品だった。
3コメント
2023.01.23 03:18
2023.01.23 03:12
2023.01.22 12:10