教誨
柚月裕子/著
読み始めてすぐに、(これは、あの事件だ!)と思った。
そう、16年前に世の中を震撼とさせた、実際に起きた事件を題材に描かれていた。当時、毎日のようにワイドショーを賑わせていた事件なので、容疑者の顔や発言、歩く姿までもが頭の片隅に残っていた。
ショッキングな事件が起きると、どうしても容疑者の性格や近所での評判が大々的に報道されるが、そのかげで容疑者の家族の苦悩が深く掘り下げられることはあまりないので、この作品を興味深く読むことができた。
ここでは、犯人がどんな環境で育ったのか、親の代まで遡って描かれている(もちろん、創作が多いとは思うが)。
ひとりの人格が形成されるまでには、親や家族、地域や同級生などいろんな要素が絡まっている。この作品では、そこが丹念に描かれているのだ。読んでいて胸に突き刺さるような出来事も、、、。
罪が生まれるには、人間と環境どちらも必要だ。犯人の人生のどこかで、運命を変えるような出会いがあればよかったのにと思わずにはいられなかった。
2コメント
2022.12.16 10:39
2022.12.14 14:25