流人道中記(上・下)

浅田次郎/著

ある日、まだ若い見習い与力の乙次郎は、上司から一風変わった任務を仰せつかった。窓際族の同心とともに、北海道へ流される罪人を青森まで無事に送り届けるというものだ。

 ※現在でいえば、与力は警察署長、同心は刑事、というところらしい。

乙次郎はつい最近結婚して入り婿になったばかりの19歳の若者。それまでは、ぱっとしない足軽の家の冷や飯食い、つまり次男だったのだが、実家とは段違いの格上の家に婿に入って、一気に将来を約束された見習い与力となって半年、妬み嫉み、周囲からの無言の圧力をひしひしと感じながらの日々を送っていた。そんな彼に降って湧いたこの任務。いったいどう捉えるべきなのか、罪人はどんな罪を犯したのか?どんな人間なのだろうか?戸惑いばかりの乙次郎の旅は始まった。

浅田次郎さんといえば、現代ものでは、「地下鉄に乗って」「天国までの百マイル」、時代物では「壬生義士伝」「蒼穹の昴」「輪違屋糸里」など、深く心を揺さぶられる作品が多く、だからこそ映像化されたものも多い。期待に胸膨らませてこの本を手にした。

結果・・・期待を裏切られることなく、実に楽しい道中記だった!流人の青山玄蕃は、おしゃべりで茶目っ気があり、不遜な態度が多い。流人の悲壮感など全く感じられない男だ。得体の知れない流人に疑念を持って否応なく北へと歩んでいく中で、長い道中に出会う人々とのふれあいを通して人生の悲哀を感じながらも、同時にだんだんと玄蕃の人間的な魅力に惹かれていく乙次郎だった。悲しくも力強い旅の中で、乙次郎が成長していく姿がまじまじと頭に浮かぶ。

この作品は、つまるところ、武士という身分よりも、どこまでも人間として生きようとした男の人生を描いている点で、「壬生義士伝」と通じるものがあったなあ。


本とドラマと生活と

ただでさえ出不精な50代主婦。 コロナ禍の中、家での時間を楽しむための必須のアイテム、本とドラマに救われる日々。 そこで得た感想をつらつらと残していこうかな。

2コメント

  • 1000 / 1000

  • みゆきち

    2023.03.25 09:58

    @なるほど・・・ドラマ化するなら乙次郎は萩原利久くんかなあ。横浜流星くんや北村拓海くんはイケメンすぎて違う・・・。玄蕃は、案外反町隆史や西島秀俊がいいな・・・なんて想像すると楽しいですね(*'ω'*)
  • 2023.03.25 09:30

    浅田次郎の作品は宮部みゆきさん同様に間違いないですね。この作品も面白そう!! 検索すると、ドラマ化するなら誰が良いとか考察されてて、菅田将暉が良いって書いてる人がいました😅